夜の帰り道、駅へ向かう途中。 雨上がりの歩道に、ひとつだけ大きな水たまりが残っていました。
何気なく覗き込んだその中に、 見慣れたはずの景色が、少しだけ違う顔で映っていたのです。
数寄屋橋のあたり。 あの、いつも明るく街を照らしている不二家の看板が、 水面の中で静かに揺れていました。
まるで、逆さにした富士山のように。
忙しく行き交う人の足音や、車の光。 現実の銀座はいつも通りなのに、 足元のもう一つの銀座だけが、どこか穏やかで、やさしくて。
ほんの少し立ち止まるだけで、 同じ街でも、こんな風に見え方が変わるのだと知りました。
うまくいかない日も、 気持ちが追いつかない夜も。
もしかしたら、角度を変えるだけで、 違う景色が静かに待っているのかもしれません。
そんなことを思いながら、
私はまた、いつもの駅へと歩き出しました。
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